2014年3月18日火曜日

トルコ産オリーブオイル


今回、FOODEXで担当した会社はオリーブ製品を扱うNATURALE GIDA、なかでもSELETEPEというブランドのエクストラ・バージン・オリーブオイルを皆さんにご紹介しました。
 

 


 
通訳の楽しみの一つに、それまで知らなかった様々な世界を垣間見れる、ということがあります。オリーブオイルは、もちろん自分でも好んでよく使用しますが、実はバージン・オイルとエクストラ・バージン・オイルの違いもよく分かっていませんでした。

今回、同社ブースを担当するにあたって、事前に調べてみたり、担当者からブリーフィングをしてもらうことで、オリーブオイルの奥深い世界を少しばかり覗くことができました。


オリーブの実から搾油しただけの、未精製で酸度が2%以下のものを、総じて「バージンオイル」といいます。中でもとりわけ酸度が低く、0.8%以下のものを、特に「エクストラ・バージンオイル」と呼びます。この基準はIOOC(国際オリーブオイル協会)により規定されています。(ただし、オリーブオイル生産者によると、「これはあくまで科学的な数値に過ぎず、味や香りに何ら影響しない」のだそうです。)

他に「ピュア・オリーブオイル」や単に「オリーブオイル」と記載されているものは、脱臭・脱色された精製オリーブオイルにバージンオイルをブレンドしたものです。

 
地中海性気候のトルコは、オリーブの生産には非常に適しております。

特に、SELETEPEのオリーブ園があるエーゲ海沿いのアイワルクは、「トルコのトスカーナ」と呼ばれるほどの名産地なのだそう。こちらのブランドはオリーブオイルには珍しいシングル・モルトで、そのフルーティーな味わいはQV EXTRAという高品質なエクストラ・バージン・オリーブオイルの国際認定団体に認められたほど。

SELETEPEに限らず、トルコのオリーブオイルは品質もよく比較的安価で、現在トルコの海外輸出強化品目の上位に入っている重要分野です。

 

実際、トルコの朝ごはんでオリーブの実は欠かせませんし、サラダでも何でもとにかくオリーブオイルをかけまくる…という印象。

 

だったのですが。

 

クライアントに実際のトルコにおけるオリーブオイルの消費動向を聞いてみたところ、実はトルコはEU各国に比べて最もオリーブオイルの消費が少ないのだそうです。大体一人頭で年間1.5L程度とのこと。あんなに何でもオリーブオイルかけてるのに!?と驚きました。

もちろん、オリーブオイルは大変好まれます。が、いかんせん他のオイルに比べると高価。
特に昨年は世界的にオリーブの収穫高が低く、価格が高騰したそうです。

貧富の差が大きなトルコでは、低所得者層の家庭ではより安価なひまわり油やヘーゼルナッツ油が消費されているし、レストランなどでも「オリーブオイル」と謳いながら実は安価な油を混ぜていたりすることも多々あるのだそう。また、マーガリンの出現もオリーブオイル離れの原因になっている、とも話していました。
 

SELETEPEのオーナーはそのような状況を憂い、

「より健康に良く、高品質なオリーブオイルの味を広めたい」と熱っぽく語っておりました。
 
ご家庭では一人頭年間30kgはオリーブオイルを消費していると言うSELETEPEオーナーご夫妻のこのスレンダーな体型が、オリーブオイルの健康への有効性を雄弁に物語っているように思うのです…。


 

ところで…オリーブオイルは実はかなりワインに「似て」います。

ブドウの果汁をいつでも飲めるように保存加工したものがワインであるならば、オリーブの果汁を年間通して利用できるよう加工したのがオリーブオイル。

同じ品種でも栽培する土地の土壌や気候で大きく味が変わるところも同じ。

また、テイスティングの仕方も、プロのやり方はとても良く似ています。

小さなグラスに注いだオイルを手で蓋をして手の中で少し温めて香りを立ててから味わう。

オリーブオイルの場合、色味に左右されないよう色付きのグラスを用いるのがより本格的。

 

どちらもトルコという土地が古代から受け継いでいる、先人たちの知恵の結晶です。

まだお試しになっていない方は、ぜひ一度、トルコのオリーブオイルを味わってみてください。

2014年3月11日火曜日

ハラール需要の謎

34日から7日に開催されたFOODEX JAPAN 2014
トルコからは、今年は昨年を上回る33社の企業が参加しました。







今回私はトルコのエクストラ・バージン・オリーブオイルを生産・販売する会社のブースで、4日間通訳としてお手伝いをしました。


オリーブオイルひとつ取っても、様々なお客様・様々なニーズがあるものと、大変勉強になりました。

中でも今回最も興味深かったのが、『ハラール認証』に関する問い合わせです。


FOODEX第一日目、パキスタン人のお客様から

「このオリーブオイルはハラールか?」

と尋ねられました。


念のため、ここで「ハラール食品」について今一度確認しておきます。

ハラール(HALALとは;
イスラム法で許された項目をいう。主にイスラム法上で食べられる物のことを表す。(ウィキペディアより)

 
食品に関しては、酒など中毒性のあるものは当然禁忌(ハラーム)ですが、特に区別を求められるのは普通食肉です。豚が禁忌(ハラーム)であることはもちろん、餌の内容にハラールに違反するものが入っていない、また屠畜の方法など細かい規定があり、一般に「お祈りしてある肉かどうか」が判断基準とされます。また、ショートニングやゼラチンなど、豚由来の成分が含まれたお菓子も禁忌(ハラーム)であり、イスラム教国では受容されません。
最近は日本でもサービス業側の「ハラール」に対する認識が広まってきたのか、食品やレストランなどでの「ハラール」表記が増えてきている気がします。
 
さて、しかし。

今回お問い合わせがあったのは、純度100%のエクストラ・バージン・オリーブオイルです。一から十まで植物性で、ハラールハラームとは全く無関係の食品分野。
尋ねられたクライアントも「???」とさっぱり訳が分からない顔。

「オリーブオイルですから、もちろんハラールに決まっておりますが…?」
と答えても、どうも会話がかみ合わない。
おかしなことを聞く人がいるものだ、と首をかしげて終わった第一日。

二日目、今度は韓国人のお客様から

「このオリーブオイルはハラールか?」

と同じ質問を受けて、これは一体どういうことかと、近所のブースのトルコ人たちと話題になりました。
 
しかし誰もが、

「植物にハラールもへったくれもあるものか」
「ハラールが何だか分かっていないだけじゃないのか」
「収穫の時に祈りながら収穫する必要でもあるのか?」

など、結局最終的な結論は出ませんでした。

そして三日目。

今度は日本人のプレスの方から
 
「このオリーブオイルはハラールですか?」

と尋ねられるに至り、ついに私は意を決して、今回数名のお客様から同様のご質問を受けているが、完全植物性の食品におけるハラールとはどういう意味か尋ね返してみました。
すると、

「実は、ちょうど先ほどハラール食品に関するセミナーを聞いてきまして…」
と、ざっくりしたことを教えて下さいました。
 

要は、イスラム圏で生産・販売・消費されるものは当然ハラールなので逐一「ハラール」と明記する必要はないけれども、国外に輸出されると、その食品がどういった環境で製造されているか消費者には見えてこない。ゆえに、消費者が安心して手に取れるための『ハラール認証』への需要が急上昇している、ということでした。従って、改めて製品に関してお祈りしたりする必要があるわけではなく、単純に「認証」を出してもらえば良いだけのことなので、トルコ企業はTSE(トルコ規格協会)に申請すれば良いのだそう。
ただ、今現在、ハラール認証は国ごとに設定されており、国際規格がないということが状況をより複雑にしている模様です。SMIIC(イスラム協力機構)で統一の認証制度を設けることが目下の課題となっているのだそうです。

実は、昨年のFOODEXハラールに関するお問い合わせが全体的に非常に多かったらしく、ハラール・フードは今年のFOODEXの最重要テーマの一つでもあった模様。

非イスラム圏に暮らすムスリムにとって、≪食の安心≫を確保することがかくも重要な問題であること、またその需要がますます膨らんできている現在の社会情勢について、今更ながらに考えさせられた『ハラールの謎』でした。