2014年4月29日火曜日

エルドアン首相とギュル大統領の駆け引き

昨年末に相次ぎ発覚した汚職疑惑があったにもかかわらず、エルドアン首相率いる与党・公正発展党が3月30日の統一地方選挙で勝利を収めた。TwitterYoutubeへの国家統制を強め、世間の耳目を集めたことは記憶に新しい。以下の写真は、統一地方選挙が終わりその結果に不満を持つ野党支持者が集まったところに警官隊が放水しているところ(首都アンカラ)。

                                          写真はAssociated Pressより

この前の「トルコの今?」のコーナーでも書いた通り、8月の大統領選を前にトルコの政治情勢は不透明感が漂い、大統領選を見据えた政治の有様(ありよう)も不安定である。エルドアン首相も出馬を視野にいれ、現職ギュル大統領も再出馬の可能性ありとも言われている。つまるところ、エルドアン首相は出馬せずそのまま今の首相職に留まるか、ギュル大統領が現首相のために身を引くか、この選択が注目を集めている。

ここで、よく引き合いに出されるのが、ロシアの「プーチン⇄メドベージェフ型」の権力交換である。いっとき、エルドアン首相が大統領となり、ギュル大統領が首相となるシナリオも描かれていたようだが、ギュル大統領が反対を表明したことでその可能性は低くなった。

以前、トルコ在住のある有識者は、個人的な見解という前置きで、「エルドアン首相が目指しているのはアメリカの大統領のような真に権力を有する大統領職に就くことでは」と言及していたのを思い出す。米国の大統領職は、世界で最も強大な権限を持つ職務のひとつ。行政・立法・司法・外交の広範囲に渡って強力な権限が集中するのが米国の「大統領職」、つまり「PRESIDENCY」である。


トルコでは行政の長は首相で、大統領よりも強力な権限を持つが、米国の大統領職とは歴史的背景も異なり比べるべくもない。エルドアン首相は憲法改正によって、より強力な大統領制を目指そうとしているとも聞く。新聞報道によると、エルドアン首相は「トルコが大混乱(chaos)に陥るようなことはしない」と発言し、与党内の議論やギュル大統領との対話を経て、最終的な判断をしたい意向を表明している。

いずれにせよ、今後のトルコの政治情勢が気になる。注目が必要だ。

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2014年4月26日土曜日

8月10日、大統領選挙へ

3月30日の統一地方選挙で、与党AKPが勝利宣言をしてから1ヶ月近くが経とうとしている。当時、エルドアン首相は「与党が勝利すれば、汚職疑惑よりも、現政権が景気や医療、交通面の改善に成功したことに国民が関心を示したことになる」と述べていた。選挙で勝利した後、イシレル副首相は「国民は嘘と中傷によるキャンペーンを無視し、投票によって平和と安定を支持した」と胸を張った。トルコは、エルドアン政権の強引な政治や保守的なイスラム教の価値観に基づく政策への懸念を抱えたまま、突き進んでいくこととなる。そして、この8月には大統領選がある。エルドアン首相の出馬も取り沙汰されている。

8月10日にはギュル大統領の7年の任期満了を受けて、国民投票による大統領選挙が行われる。初の直接選挙方式となる。これまで大統領は議会が選出していたが憲法の改正により、国民が選ぶこととなった。任期は5年。ギュル大統領は再度出馬することもできるが、まだ態度を明らかにしていない。現在、トルコの大統領職は名誉職的な位置付けにある。今後更なる憲法改正で大統領が権限・実権を持つようになるとも言われ、エルドアン首相がどう出るか目が離せない。

さて、トルコ経済だが、2013年のトルコの経済成長率は景気回復が加速した結果4%で着地した。それに伴うわけでもないが、近年、トルコへの関心がこれまで以上に高まっている。一昨年5月に日本経済新聞社はイスタンブールに支局を置いた。トルコに関する記事が数多く配信され、トルコ特集も組まれるようになった。トルコに関する情報が少ないだけに、日経の情報は助かると日本企業から直接筆者が聞いたのも1度や2度ではない。ある銀行系シンクタンクの担当者も明らかにトルコ進出に伴う相談件数が増えていると明かしていた。


その担当者によると、「トルコは日本にとっても魅力あるイスラム国家」。つまり、トルコは高成長が期待できる中東や中央アジアに近く、既にそういった国々と強い経済・ビジネス関係を構築している点が魅力と指摘する。日本企業が出遅れ気味な地域に対して、進出済みのトルコ企業と組むことは市場参入において有効かつ有力な方法である。一方、トルコ側も日本の技術力や資金力に期待をかけ、「ウィン・ウィン」関係を築けるビジネス・パートナーであることが両者の距離をより近づけているといえる。


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2014年4月4日金曜日

トルコ統一地方選挙結果


330日、トルコで統一地方選挙が行われました。

投開票の結果、第一党のAKP(公正発展党)45%を上回る最大得票率で他の政党を大きく引き離し、圧勝しました。


昨年5月末からのトルコ全土にわたる大規模デモの火は未だくすぶり、12月の現職閣僚子息の汚職摘発に続き現首相の電話盗聴音声テープの流出、選挙直前には現政権によるソーシャルメディアの強行遮断など、混乱に次ぐ混乱のトルコ内政。AKP及びエルドアン首相に対する市民の支持は完全に二分されているかの態でしたが、結果はエルドアン首相が民意を得たという形になりました。

世俗派が集中しているチャナッカレやイズミールなど数都市と、クルド系政党が強い東部を除き、アナトリア内陸部はほぼAKP一色。やはりイスラム保守層のAKP支持は固いようです。また、AKP圧勝のポイントとして、エルドアン首相の「リーダーシップ」と「パフォーマンス」が挙げられています。一方では「強権的」ともされるエルドアン首相の政治手法ですが、彼に代わる「強いリーダー」が現れない限り、この分厚い保守層の壁はなかなか崩れないのかもしれません。


ひとまずは、これでトルコの政局は一旦の安定を見た…のであれば良いですが。



ところで、今回の選挙で目を引いたのは、記録的な得票率で市長に選出されたクルド系野党BDP(平和民主党)所属の女性政治家たちの存在です。

 
シュルナク県ジズレ市長に選出されたレイラ・イムレット女史(27は、5歳の頃に父親が目の前で殺害されて以来家族でドイツに移住、今回立候補のため故郷ジズレに戻り、83%の得票率で市長となりました。

もう一人、ディヤルバクルのリジェ市で91%の票を集めたのは、25歳のレザン・ズウルリ女史。ディヤルバクルのバーラル市役所の付属機関に勤務の傍ら、ディジレ大学ラジオ・テレビ番組制作科に合格、現在も学業継続中。

 



 

…いずれも美女です(鼻息)!!

 

BDPの躍進が、トルコ国内のクルド諸問題をさらに解決の方向へと導き、また女性や若手の政治参加のモデルケースとなってくれることを期待します。