2014年7月23日水曜日

アリ・ババジャン副首相の去就

トルコ国内ではこの8月に大統領選挙が行われる。経済の司令塔といわれ、トルコの近年の高成長の立役者として高い評価を得ているのが副首相のババジャン氏だ。今、トルコでは大統領選挙の行方と経済閣僚の動向が注目を集めている。ババジャン氏は日本語を勉強したこともある親日家として知られているが、そのことを知る人は少ない。2002年経済担当相、2007年外相を経て、2009年5月から今の副首相に。1967年生まれ、今年で47歳と若い。

アメリカのノースウエスタン大学で経営学修士号を取得しているこの若き有能な副首相は来年6月の国会任期満了で政界引退と囁かれている。国会議員の4選が禁止されているからに他ならない。同氏の去就が注目されるのは、派手さこそないもののIMF管理下にあるトルコ財政構造改革に誠実に取組み、増税など国民が嫌がる政治を実行してきたことが挙げられる。

一方、米国のブルームバーグ通信はエルドアン首相の言説には、経済学の「イロハのイの字」も理解していないと言及、仮にエルドアン氏が大統領になりババジャン氏がいなくなったら、今後、トルコの金融政策はどうなるのか? 今、そんな心配が市場を覆っている。

このババジャン氏、実は、201112月に日本を訪れ、日本・トルコ経済フォーラム「トルコビジネスの未来」で講演をしている。日本の積極的な対トルコ投資や貿易の活性化を求め、トルコに外国企業の投資を誘致するため、労働市場改革や法整備などを進める考えも明らかにした。


筆者も昨年5月、イスタンブールのテキスタイルの展示会のオープニングセレモニーでババジャン氏の話しを間近で聞いている。一切原稿なしで滔々と淀みなくトルコ・テキスタイルの現状と将来について来場者に力強く訴えかけていたのを思い出す。周りが用意した紙を見ながらしゃべり答弁する日本の政治家が圧倒的に多い中で新鮮さと小気味よさを感じたのを覚えている。



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2014年7月6日日曜日

日経BP社、トルコの出版社MDG社を買収

日経BP社は先月2日、トルコの出版社Mutlu Dergi Grubu A.S.(MDG)を買収し、トルコでの出版事業に乗り出す。日経BP社の長田公平社長とMDG社の創業者であるザフェル・ムトゥル氏が、イスタンブールで共同記者会見の席で発表を行った。増資分を含め買収額は1200万トルコリラ(約6億円)。日経BP80%を出資し経営権を握る。社名は「日経MDG社」とする。

日経BP社といえば日経ビジネス

本社はイスタンブールに置く。日経本体のイスタンブール支店が設置されたのは約2年前。日経新聞に続き、日経BPが引き続きトルコに攻め入る動きに注目すべきである。増してや、日本の出版社がトルコ企業を買収するのは初めて。MDGの従来の雑誌事業を引き継ぐこと、また、デジタル事業を強化し、医療や建設などの専門情報の提供を行い、セミナー開催も視野に入れた展開を計画しているという。

日経BPが買収に動いたのは、トルコの経済成長が続き「日経BP社が培ってきた技術系情報の潜在的な需要がある」(長田公平日経BP社長)との判断による。
MDG社はとりわけ技術系部門の経営資源の相乗効果に期待を寄せている。

MDGは 米タイム誌からライセンスを得て、経営誌の『フォーチュン』、ファッション・生活系の『インスタイル』『マーサスチュアート・ウェディング』など有名誌のトルコ語版を発行している。日経BPはこれら既存事業を引き継ぎ、今後、デジタル事業を強化していく。

ムトゥル氏はトルコメディア界の有力者で、これまで大手新聞社の経営や私立大学の運営も手掛けてきた人物。日経MDG社の社長に就任し、日経BP社の長田社長が日経MDG社の取締役会議長に就任するほか、同社の代表権を持つ上級副社長を日経BPから派遣する。


今後の動向に注目したい。

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2014年7月5日土曜日

エルドアン首相が大統領選に出馬へ


エルドアン首相(60)は1日、首都アンカラで「民選の大統領がトルコを飛躍させる」と声高らかに演説を行い、8月に実施される大統領選への出馬を表明。大統領を国民が直接選ぶのは今回が初めて。エルドアン氏の当選が有力視されている。とはいえ、第1回投票で過半数を獲得できない場合、ライバル候補が力を結集してエルドアン氏に対抗するとみられている。その場合、人口の2割近くを占めるクルド人が行方を左右するのではとも言われているが、「勝てない選挙に出るわけがない」エルドアン首相の勝利はほぼ間違いないと見るのが妥当だ。

Photo by Reuters


今のトルコは、エルドアン首相率いる与党の公正発展党(AKP)と世俗主義政党の共和人民党(CHP)と極右政党の民族主義者行動党(MHP)との戦いである。野党側は統一候補としてイスラム協力機構(OIC)の前事務局長のエクメレディン・イフサンオウル氏(70)を擁立。しかし、国際問題やアラブ世界における同氏の実績を知る人は少なく、ほとんど知られていない対立候補が選挙戦に勝つことは常識的に考えてあり得ないのではないだろうか。

エルドアン氏についていつも言われること、それは2003年に首相に就任しトルコ経済に高成長をもたらした功績は大きい。一方、反対勢力を「敵」として見なして激しく攻めまくる「強権」に対する懸念のくすぶりも否定できない。トルコはEU加盟を望んでいるが、人権侵害に対する懸念も浮上しているほどだ。

昨年末、汚職疑惑が急浮上し、エルドアン氏は「対立する宗教団体が捜査機関に浸透して政権を攻撃した」と非難した。捜査機関幹部を更迭し危機を乗り切ったものの、長期政権の明らかな「ひずみ」と周りでは受け止められている。

今のトルコと日本はなんとなく似ている気がする。以前、民主党が突如として政権をとった。しかし、不慣れ未熟の行き当たりばったりの思いつき政策で国民の信を失いあっと言う間に自民に政権を奪還されてしまった。民主党の不甲斐なさの記憶は新しい。鳩山さん、菅さん、野田さん、いずれも時代の変化の弾みで歴史のイタズラとも思える人が首相になってしまった。

エルドアン氏は「光と影」の両方を併せ持っている。光の大きい分、影も大きい。振り子の振り幅に似ている。その意味ではエルドアン氏はトルコを牽引する英雄なのかもしれない。問題はエルドアン氏に代わる今のトルコに必要なより良い政治家が見当たらないこと。これは今の日本の野党の実態と重なる。集団的自衛権の行使容認、憲法解釈変更の閣議決定を十分な議論を尽くさず拙速に押し切ってしまった安倍さん。それに対して国民の意思を代表してなんら対抗できないリーダー不在の野党。そんな図柄がダブってみえてくる。

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