2014年9月23日火曜日

大統領選挙後の今のトルコ

先月8月10日に大統領選が行われ、エルドアン氏が選ばれた。その顛末についてはこのコーナーでも取りあげている。そして1ヶ月半が経とうとしている。現地トルコから伝わってくる新聞記事その他情報からその動向を紹介したい。エルドアン氏が直面する「長期政権」への課題は何であろうか?

10年以上に渡る首相経験を踏まえ、還暦を迎えたエルドアン氏は次ぎなる大統領職に就任、更なる長期政権を目指すシナリオの第一歩を歩みだそうとしている。一見、盤石そうにみえるが、国の内外に課題が山積し、決して平坦な道を歩むことにはなりそうにない。

一部の報道では、トルコの直面する周辺国との軋轢に加え、「内憂外患」という言葉が紙面を飾る。内憂外患とは、文字通り、国内の心配事と外国との間に生じるやっかいな事態を指す。内にも外にも憂慮すべき問題が多いことである。

先ずは、来年6月までに実施される総選挙で与党が勝利を収めること。これも一つのクリアすべき関門だ。そのためには、今のトルコ経済を安定軌道に乗せ、より強固で盤石なものにすることが求められる。過去10年以上に渡ってエルドアン氏がとってきた独自すぎる外交手法がもたらした近隣周辺国との軋轢も未解決なままである。

エルドアン大統領を取り巻く有力者の面々から、今の課題や問題点をみることにしよう。

(図表:日経夕刊 ニュースぷらす 9.19より)



エルドアン大統領とギュル前大統領の距離(?)
前大統領のギュル氏とエルドアン氏は公正発展党(AKP)を遡ること2001年に創設した仲間である。エルドアン氏が大統領に選ばれた際には、ギュル氏を後任の首相に据えるのは当然とみられていた。結果はエルドアン氏側近のダウトオール前外相(55)が首相指名された。今、ギュル氏はエルドアン氏の大統領権限の強化に反対を示し、お互いが距離をおく関係となっている。

トルコ政界屈指の知日派ババジャン副首相
ギュル氏に近いのはババジャン氏(47)。副首相として引き続き経済の司令塔の役割を担う。トルコ政界では屈指の知日派として知られている。米国で経営学修士を得て30歳代で政界入りしたババジャン氏は学生の頃、日本企業を研究テーマに選んで日本に来ては広告代理店などを訪問したらしい。トルコ国内での日本企業進出に伴う式典などにもまめに顔を出すという。確かに、筆者もイスタンブールで開催されていた展示会のオープニングスピーチで熱く語るババジャン氏を目の当たりにしている。

日経イスタンブール発の記事(9.19日経夕刊)によれば、「財政規律を重視するババジャン氏の政策は金融市場で信認が厚い。増税など一般に不人気な政策も必要ならば断行する。」とある。また、「ババジャン氏は中央銀行総裁のバシュチュ氏(48)と幼なじみで、シムシェキ財務相(47)とも協力関係にある。AKPが内規で国会議員の4選を禁じているため、現在3期目のババジャン氏は次期総選挙に出馬しない可能性が高い。同氏が政権から去れば、引き続き利下げを求めるエルドアン大統領からの圧力に耐え切れず、バシュチュ氏は任期半ばで辞任するとのシナリオもささやかれている。」と伝える。

外交面での異常事態
イスラエルとエジプトにトルコからの大使が不在という異常事態が続いている。エルドアン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相(64)との関係は冷え込んでいる。ことの発端は2010年にイスラエル国軍がパレスチナ支援船を襲い、トルコ人乗船者を殺害した事件にある。同盟国・米国の仲介も受けつけていない。

日経夕刊の同記事を要約すると、「エルドアン氏が国際関係を複雑にしているのは、イスラム原理主義を排除していないこと。エルドアン氏率いる与党AKPはイスラム色が濃く、氏は若い頃、イスラム教指導者の養成学校に通っていて、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに親近感を抱いていた。このためエジプトで2013年に起きた軍事クーデターで同胞団出身の大統領が追放されると、同国軍部を激しく批判。軍出身のシシ氏(59)が選挙を経てエジプト大統領に就いても関係修復に消極的。」といった按配である。


こんな事情でトルコの内憂外患は今後も続く。トルコへの進出や貿易投資を考える日本企業においては大変気になる点で、今後の動きに注目せざるを得ない。このコーナーでは引き続き、トルコ進出や対トルコ貿易投資を考える日本企業に役立つ情報を提供していきたい。

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